ワークベンチは工房のメインアイテムです。これがないのはキッチンにシンクがないようなものなので相当気合を入れて着手しました。20年くらい前のことです。
ホンモノのベンチトップは広葉樹の板を縦使いにして貼り合わせたもので厚さ3インチから5インチもありますが、ワニ工房ではもう少しお手軽にタモの集成材(530×1500×40mm)をベンチトップにして脚は2"×4"のSPFを2枚合わせとしました。ストレッチャーも2"×4"のSPFとし、高さはやや低めの870mmとしました。

脚の間は収納スペースにしました。いわゆるヨーロピアンスタイルです。

日本の大工さんは器用なので手で押さえたり足で踏んだり尻で乗ったりしてやってしまうのでバイスを使いません。
子供の頃からそれを見ていたのでそういうもんだと思っていましたが、バイスで材料をガッチリ固定して正しい体勢でやってみると驚くほど楽にできます。楽にできるということは、他に力や注意を注ぐ余裕ができるということなので、精度も驚くほどよくなります。
フロントバイスは見てのとおりとても分かりやすいシンプルな構造で、インストールも簡単です。
このバイスの欠点は下方向に浅いことで、私の作ったバイスでは深さは110mm程しかありませんが、下部にボルトとジョー(顎)を保持するためのロッドが通っているので構造的にどうしようもありません。

鉤形のジョーが特徴的ですが、ボルトが露出してないのでちょっと不思議な構造です。
挟む面は150×100mmほどですが横方向にも下方向にもオープンで、強力に挟むことができます。多少作るのは面倒ですが、私のお薦めはこれです。
なお、バイスの専用金具は当時はアメリカから個人輸入しましたが、今ではAmazon等で簡単に入手できます。Youtubeでは市販のボルトを使ってお手軽にバイスを自作しているのを見かけますが、本気で締めたいなら高くても専用の金具をお勧めします。
「バイスが壊れちゃったよ。」 
「なんか挟んだんじゃねーか?」
という熊さんと八っつぁんのようなことになりかねません。
金を惜しんで役に立たないバイスを作るのはどう考えてもアホ手です。こんな失敗をした人でも実物を見れば何でただのボルトがこんなに高いのか納得できると思います。

工房移設に伴い、20年ぶりに天板を外してメンテナンスしました。

右がフロントバイス、左がテールバイスです。

メンテナンスのついでにベンチの向こう側にツールの退避場所(溝)を作りました。

壁との間に隙間があると物を落とした際に拾うのが大変だけど、ピッタリ壁につけるとちょっとせせこましいのが悩みの種でしたが、ここに一段下がったスペースがあると物が落ちる心配がなくベンチトップは広く使えるようになります。これを考えた人は本当に賢いと思いました。 

フロントバイス ボルト部分をグリスアップし、ジョーに厚手の革を貼りました。 

テールバイス これもグリスアップして革を貼っています。革を貼るとやんわりと確実に締められるようになりました。

ツール置き場のおかげで奥行き方向に余裕ができました。トップを一皮剥いてピカピカにしようかとも思いましたが傷(失敗の記録)がなくなるのも寂しいのでやめました。

ワークベンチは普通のテーブルと違って水平方向の大きな力が頻繁にかかります。そのため脚とストレッチャーの接続はホゾでガッチリ固めるのが本来のやり方ですが、増し締めできるボルトで固めるお手軽な方法があって、それ用のボルトとナットのセットが市販されています。ワニ工房でもこれを採用しました。

今回のメンテナンスに伴い緩みをチェックしましたが、全く緩みはありませんでした。
構造的にホゾの方が強いことは確かですが、ボルト締めでも実用上は何の問題もないと思います。

ベンチトップに19mmの孔(ドッグホール)を等間隔に開けて丸棒(ドッグ)を差し込んでワークの固定に使います。真鍮製、アルミニウム製、プラスティック製、木製等いろいろありますが、やんわり締め付けられて刃物を当てても刃こぼれしない木で自作するのが機能的にもコスト的にもおすすめです。

フロントバイスのハンドルが長すぎるので5cmほど短くしました。

使い勝手がよくなったのでテールバイスのハンドルも短くしました。

木端削り用の治具